PCVバルブの動作について
- 2017/10/08 10:44
- カテゴリー:自動車評論
PCVバルブの動作について
これまでにネット上で色々なPCVバルブについての解説を読んでみたりしたのですが、説明がちょっと不明瞭な点が多く感じられたので、自分なりに理解を深めるためにも、PCVバルブの動作についてまとめてみました。
※内容に間違い箇所がございましたらご指摘ください。m(__)m
PCVとは
PCVとは、Positive Crankcase Ventilationの略になります。
PCVバルブを使用したブローバイガス還元システムについての説明は割愛しますが、PCVバルブを使用したクローズドタイプのブローバイガス還元システムは、エンジンヘッド等から2系統の配管があります。
ここでの説明は、2系統の配管のうちの1つはPCVバルブが接続されてインテークマニホールド(以下インマニ)に接続され(1系統)、もう1つは、エアークリーナーの後ろのサクションパイプに接続されている(2系統)前提での説明となります。
PCVバルブの動作状態
ネット上で色々な方が解説図を起こしているのですが、NAエンジン、過給機付きエンジンの場合で説明内容が異なったりするので結構混乱します。
ここでは、NAエンジン、過給機付き、それぞれの状態を解説します。
また、上記の図に示したように、PCVバルブの4つの状態に分け、1.エンジン停止時、2.アイドリング中、3.アイドリング~大気圧、4.過給中で説明します。
実際には、1~2、2~3、3~4の状態がオーバーラップするので、細かく区分けできるようなきっちり分けられる状態にはならないと思いますが、混乱を避けるために4つにわけてみました。
1.エンジン停止時
この状態ではブローバイガスは一切発生せず、インマニ側から何の圧力もないので、基本的に緩く閉まっている状態になっています。
表現的には、少し遊びがある感じで、完全に密閉された状態ではない状態です。これは、自分の手元にあるPCVの状態ですので、PCVバルブによっては、何の加圧も無い状態で、完全密閉になる物もあるかと思います。
2.アイドリング中
アイドリング中の説明の前に、大前提で、もっとも重要な説明として、基本的にPCVバルブの内部の動作主導権は、インマニの圧力によります。インマニ側が圧力を失う状態、すなわち大気圧の時に限り、ブローバイガス側から圧力があれば、その圧力に合わせて動作する状態もありますが、基本的にPCVバルブの動作主導権はインマニ圧になります。
多くのPCV解説ページで、この説明がされていない解説が多いため、勘違いしてしまうケースもあるのではないか?っと思ってます。
アイドリング中は、インマニの中は強い負圧となりますので、PCVバルブは若干開いた状態となり、ブローバイガスは流れにくくなり、少しだけブローバイガスを吸う状態になります。
2系統側のPCVバルブが付いていない経路は、PCVバルブの負圧によってサクションパイプからクランクケース内部に空気を取り入れる状態となり、クランクケース内部が換気される状態となります。
したがって、クランクケースは弱い負圧状態~大気圧に近い状態に保たれます。
この状態のPCVバルブの動作は、NAエンジン、過給機付きエンジン共に同じです。
3.アイドリング以上~加給圧がかからない大気圧
インマニは負圧~大気圧になり、アイドリング状態から負圧が弱くなるに比例してPCVバルブが大きく開き、大気圧付近でまたほぼ流れないか(1のエンジン停止時とほぼ同じ状態)、ブローバイガスの圧力がある程度高い場合は、ブローバイガスの圧力によってが排出される状態になります。
2系統側のPCVバルブが付いていない経路からもサクションパイプの吸引によってクランクケースのブローバイガスを吸い出す状態になり、クランクケースは負圧状態になります。
この状態のPCVバルブの動作は、NAエンジン、過給機付きエンジン共に同じです。
4.過給中(ブーストがかかった状態)
インマニからの圧力が正圧になるので、PCVバルブはほぼ閉じられた状態か、PCVバルブによっては完全に閉じた状態になります。
すなわち過給機付きのエンジンの場合、加給圧がかかるとPCVバルブが塞がれるので、この経由でのブローバイガスの排出はほぼ行われない状態となります。
2系統側のPCVバルブが付いていない経路からのみ、サクションパイプの強い吸引によってクランクケース内部のブローバイガスを吸い込む状態になり、クランクケースは負圧状態になります。
この状態のPCVバルブの動作は過給機付きエンジンのみとなります。
クランクケースの減圧バルブと勘違い?!
2009年ぐらいからクランクケースの減圧バルブ(減圧弁)なるものが流行り、様々なエンジン形式に取り付けられている、様々なPCVバルブを使用してテストされている方が多く、偏った情報を読んでしまうと勘違いしてしまう事もあるかと思います。
(実は、自分も勘違いしていた一人だったりします。(苦笑))
アフターマーケットで一般的に販売されているクランクケース減圧弁は、完全なるワンウェイバルブなので、PCVバルブと動作が異なります。
クランクケース減圧弁としてPCVバルブを使用した場合、うまく減圧される場合もあるかもしれませんが、PCVバルブの特性上、特に効果が出ない場合や動作不安定な状態の場合もあるかと思います。
PCVバルブのオリフィス的役割
PCVバルブは、内部の径のサイズによって、流れる流量を制限するオリフィス的な役目も担っています。
そのため違う車種の物を流量するには注意が必要です。
考え方的には、大は小を兼ねる的な要素があるかと思いますが、径が小さいPCVバルブを装備した車両に大きな径のPCVバルブを付けた場合、正常に動作するか保証はありません。
また、径が小さいPCVバルブは乳化(エマルション)した際、つまりやすくなったりします。
ブローバイガス乳化(エマルション)による問題
PCVバルブは、ほぼ常にブローバイガスが流れる状態になっています。ブローバイガスの成分には、クランクケース内部からのエンジンオイルミスト(霧状になったオイル成分)が含まれたり、エンジン燃焼過程で発生した水蒸気成分や大気中の水分も含まれ、オイルと水分がまじりあい、さらに気温が低い状態が続くと乳化(エマルション)してドロドロな状態になったりします。
以下の写真は、極端な例ですが、BMWのCCVバルブが乳化した状態です。
写真のBMWのエンジンのクランクケース圧制御はシールドタイプにプラス機能追加をしたようなシステムになっていて、寒冷地などでトラブルになることをBMWも認めているようです。
関連記事:
必見!BMW E39/46/53/85/83/60のCCVトラブルサービスマニュアル
上記のような極端な例になることは少ないと思いますが、冬場など気温が低い時期の前後には、PCVバルブの状態を確認しておくとよいかと思います。
PCVバルブは取り付け方向が限定されている?!
また、あまり記載されていないのですが、PCVバルブには、取り付け時の方向があります。傾けて付けた場合、思うように開かなかったり、常に開いたままになったり、取り付け状態によって動作が不定となる場合があるようです。
これは、自分が体験(実験)した事ですが、オイルキャッチタンクの出口のホースにPCVバルブを割り込ませた際、PCVバルブを上向き方向、水平方向で、まったく異なる動作となりました。
ほぼ水平方向に取り付けたときが以下の記事になります。
関連記事:
ブローバイガス経路に新規PCVバルブの取り付け(BMW E46)
そして、同じ場所にPCVバルブの出口を上向きにして傾斜を付けたときのが以下の記事となります。
関連記事:
この記事で「謎」っと言っている部分なのですが、結果的にPCVバルブを斜めにつけたため、PCVバルブが閉じられた状態が長くなり、溜まったブローバイガスがサクションパイプ側に吸引できず、ブローバイガスの強烈な臭いが充満した状態になったようです。
過去の写真で比較してみると、こんな感じで取り付け状態の若干の違いによってトラブルになったりします。
このようなトラブルを避けるため、他車のPCVバルブを流用する場合は、そのPCVバルブがどのような状態でエンジンに取り付いていたのかを確認した方がよいでしょう。
大半は、水平方向に取り付けられているかと思いますが、エンジンヘッドの形状に合わせて斜めだったり、、真上方向に排出するように取り付けるPCVバルブもあるかと思います。
クランクケースの減圧バルブとして使用できないバルブ
上記は先日、eBayで131円で購入したワンウェイバルブです。
関連記事:
日本のアマゾンなどで600円前後で販売されているこのワンウェイバルブは、接続できるホースも12mmと比較的太めなのでクランクケースの減圧バルブに流用できそうですが、実はこれエアバルブではないのでオイルやガソリンなどの液体物にしか使用できません。完全に使用できないという訳でもないかもしれませんが内部の弁が開くのにある程度の圧力が必要で、この手のワンウェイバルブはPCVバルブと異なり、負圧主導によって開閉するのではなく、流れ込む元方向の圧が必要になるため、クランクケースの減圧弁として使用した場合トラブルとなる可能性があります。
もしクランクケースの減圧弁を取り付けるならば、高額商品が多いのですが、クランクケースの減圧弁として販売されているものを使用することをお勧めします。
以上、「PCVバルブの動作について」でした。