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後付けスーパーチャージャーについて

後付けスーパーチャージャーについて

色々な理由から後付けスーパーチャージャー(Superchager)に興味を持つ人は多いかと思います。特に非力な車のパワーアップを考えている人が圧倒的に多いとは思います。私もその一人でした(笑) そもそもNAエンジンに後付け過給機を取り付けるなんて「漫画の世界の話」と思っている人も現実に実在したりして(笑)、海外では車種によっては後付けスーパーチャージャーの装備が流行っていたり、別にタブーな話でも夢の話でも空想の世界の話でもありません。

どこからどうまとめて書いたらよいのかわかりませんが、自分の車にはスーパーチャージャーを2006年に装備して現在2023年、17年間、約17万キロ(装備時は約9万キロ、現在は26万キロ)走行してきたので一度まとめて記事にしてみることにします。っと言っても私は自動車の専門家でも評論家でもなく、あくまでも経験して自分が知りえた情報やデータなので間違っている部分もあるかと思いますがその辺はあらかじめご了承下さい。当然書いてある内容はご自身責任の範囲でご参照下さい。「こんな当たり前の事何書いてるの?」なんて思う方もいるかもしれませんが、一度文章にまとめてみたいと思った次第です。

スーパーチャージャーの仕組みに関する詳細は割愛しますが「エンジンの回転動力を使用して過給機を回して過給する」事ぐらいは把握していないと話が進みませんかね?排気量制限による車検制度があるおかげか知りませんが日本はターボ大国になった背景は否定できず、ターボチャージャー付の車両は珍しくありませんがスーパーチャージャーはどちらかというとマイナーなイメージでしょうか?

 

自分の中では映画「マッドマックス」で「スーパーチャージャー」という言葉を初めて耳にした気がします。「タクシーNY」でもスーパーチャージャーをプレゼントされるシーンなどから言葉的な響きも含め「スーパーチャージャー」という名称には少し憧れというか名前のごとくスーパーなイメージがあるんだと思います(笑) スーパーチャージャーの装備車両で実物を見たのはトヨタの初代MR2だったかな?多分、他にもあったかもしれませんが、私は車は好きですが車に詳しいわけじゃないので良く知りません。

 

話がそれましたが、ここから先はターボチャージャーとスーパーチャージャーの違いがわかっている前提で話を進めます。

後付けスーパーチャージャーの車検は?

まずはじめにスーパーチャージャーを日本国内で装備したときの「車検はどうなのか?」という事を過給機装備する上で最も気になる点でしょう。スーパーチャージャーを含む後付け過給機(最近では電動スーパーチャージャーもデバイスの進化によって実用的になってきているようですね。)の装備は車検はなんの問題ありません。過給機追加による改造申請、構造変更等は一切必要ありません。あくまでも車両の外見(見た目)が変わらない前提です。マッドマックスのインターセプター号のようにむき出しのスーパーチャージャーを装備した場合などは車検で別な問題にひっかかる可能性は否定できません。

マッドマックスインターセプター号のスーパーチャージャーの吸気口

上記はこちらの記事でインターセプター号のレプリカを作成する段階で映画で実際に使用されたパーツを入手した際に撮影させてもらったものです。作成したインターセプター号はナンバー取得が出来たそうなのでこれがボンネットからむき出しに出ていても車検はクリアできるのかな?

インターセプター号のスーパーチャージャーユニット

ちなみに上記がインターセプター号に装備されているスーパーチャージャーユニットです。話がそれましたが日本の変な車検制度のおかげで(?)過給機による排気量アップによる構造変更申請は必要ありません。

 

過給機による排気量アップ」という点に関してこの表現が正しいのかわかりませんが、そもそもターボチャージャーやスーパーチャージャーなどの過給機をつけるとなぜパワーが出るのか?わかっていない人もいたりするのかもしれないので簡単に説明します。NA(自然吸気)エンジンの場合、アクセル全開にしてエンジンに取り込まれる空気は基本的に人が空気を吸うのと同じ大気圧の空気を吸い込んでいます。そこへ過給機を追加して圧縮した空気をエンジンに吸わせることでより多くの空気(酸素)を燃焼できるようになるためエンジンの排気量を上げたときと同じ結果となります。

 

日本国内だと過給圧またはブースト圧と呼ばれる単位がKg/cm2で示される事が多いと思いますが、例えば「ブースト1.0キロ」というのは正確にはkg/cm2という単位で、1.0kg/cm2のブースト圧の場合、単純にエンジンの排気量が2倍になっているという事になります。日本の車の過給圧は相対圧表現されるのでよく海外の記事を真に受けてブースト2.5kg/cm2というような事を書いて勘違いしている雑誌記事などをよく見かけましたが、海外では絶対圧表現がよく使用されます。絶対圧(圧力)から大気圧(1.0kg/cm2)を引いた値が相対圧になるので、例えば日本国内でブースト圧0.6kg/cm2と表現した場合は絶対圧では1.0kg/cm2足した1.6kg/cm2となります。エンジンの排気量が2000ccだった場合1.6倍の空気を2000ccの容積に押し込む事になるので、エンジンの圧縮比をそのままなNAエンジンで考えた場合、単純計算で2000ccx1.6=3200ccとなり過給機をつけることで排気量が上がった事と同様な結果となります。

 

以上の理屈から過給機をつけることで排気量を増やしたときと同じ結果となるわけですが、日本の車検では過給機装備による排気量制限等は一切ありません。あくまでもエンジンのシリンダー容積=総排気量となります。

 

先ほどの過給圧の表現や単位の話に少し戻りますが、自分の車がBMWということもあり海外の情報を得る事が多くよく混乱した点が過給圧の単位表記の違いです。kg/cm2ではなくPSI(ポンド表記)の場合、さらにそれが絶対圧だったりすると相対圧のkg/cm2に慣れきっている場合、途方もない過給圧をかけているように勘違いしてしまう事がよくありました。ヨーロッパ系のスーパーチャージャーキットなどではMax Boost 20PSIなどと書かれていたのですが、実際kg/cm2で相対圧で表記計算してみると0.4kg/cm2程度の過給圧だったりします。日本国内でも単位系は国際表記に合わせる方向にありますが慣れ切った単位を頭の中で切り替えるのはなかなか難しいですねw

スーパーチャージャー装備でパワーはどのぐらい上がるのか?

後付けスーパーチャージャーを装備する上でこれが一番気になる点ですかね?結論から言うと簡単には何馬力とか表現は出来ませんが一般的なNAエンジンにスーパーチャージャーを装備した場合、過給圧でほぼパワーが決まります。国産車向けにもある車種別キットなどにはブーストメーターが含まれていないので実際にどのぐらいの過給圧がかかっているのかわからないというケースもあったりするようですが、流石にこれでは後付け過給機をつける意味があまりないかもしれません。どのぐらいの過給圧がかかっているのかは知っておく必要があるかと思います。NAエンジンの圧縮比は市販車のターボエンジンのように圧縮比を落としてしないので、ターボチャージャー並みの過給圧をかけるとノッキングしてしまうので基本的にはターボチャージャーよりは過給圧は低いことが前提となっているかと思います。詳しく調べたわけじゃないのですが国産車向けのスーパーチャージャーキットは低過給な仕様で最大でも0.2~0.3kg/cm2ぐらいでしょうか?過給圧を上げて空気量を増やすと同時に燃料も増やさなければならないわけですがインジェクターを交換をせずに装備できるスーパーチャージャーキットで考えると市販車のNAエンジンのインジェクター噴射量はエンジンの設計段階で最大噴射量の80%前後をピークとしているはずなのでECUをいじって燃料噴射量を変えてもインジェクター噴射量で頭打ちになりますので、過給圧も0.2kg/cm2前後とかなり低過給圧仕様になっているかと思います。なのでカタログスペックで例えば165馬力のエンジンの車両で最大過給圧0.2kg/cm2の場合、絶対圧換算で1.2kg/cm2、165馬力x1.2で198馬力が最大パワーとなります。

スーパーチャージャーのキットも安全マージン十分なライトな仕様の物は、NA仕様のエンジンに「パワーとトルクに厚みをつける」ようなイメージなものが多いかと思います。「車が軽くなる」と言った表現が適しているかと思います。10馬力前後のパワーアップではあまり体感や違いがわからないかもしれませんが20~30馬力ぐらいパワーアップすると誰でも体感できるので、そのあたりを狙ってキット化しているだと思います。

 2014年12月15日、私の車のシャーシダイナモで計測結果

上記は2014年12月15日、私の車のシャーシダイナモで計測した結果です。

2014年12月15日のシャーシダイナモ計測

計測結果は342.5馬力となっています。スーパーチャージャー装備によって約150馬力のパワーアップとなりました。

ブーストメーター

この時の最大過給圧は0.8kg/cm2でしたのでBMW E46 328ciのカタログスペック193馬力で計算してみると1.8(0.8kg/cm2を絶対圧換算)倍すると347.4馬力となりほぼ計算通りの値となります。シャーシダイナモに乗せて実際に計測すればどのぐらいのパワーが出ているのかは判断できますが、このように計算結果からもわかるようにスーパーチャージャー装備の上、どのぐらいの過給圧がかかっているのかがわかれば「どのぐらいパワーが上がったのか?」ピークパワーの概算は計算することが出来ます。なので後付け過給機を装備したらブーストメーター(+圧力センサー)は必須なものとなります。私も装備している日本精機のDefiシリーズなどはメーター本体だけではなくシステム構成の製品となりますが最大過給圧のメモリ機能なども装備しているので全開時にメーター読みをしなくても最大過給圧を記録することが出来ます。もしも過給機装備の上シャーシダイナモに乗せた結果とカタログスペックから過給圧で計算した値が大幅に異なる場合、一番疑うべきはメーカーのカタログに記載されている最大パワーの値です。

実際に慣らし運転期間を終えた新車をシャーシダイナモに乗せて計測したら全然パワーが出ていなかった事は普通にあったりしますので(苦笑)

 

話がそれましたが「スーパーチャージャーを装備することでどのぐらいパワーがあげられるか?」を判断するには「インジェクター交換もして燃料噴射量を増やすか?」という点が重要で「乗りやすくするだけのスーパーチャージャー装備」なのか、「最大パワー狙いのスーパーチャージャー装備」なのかで判断が出来るかと思います。モアパワーを求める場合はスーパーチャージャー装備する際にインジェクター交換も含めたスーパーチャージャー装備が必須となります。

 

ちなみにスーパーチャージャー装備によって車のトップスピードが変わる事はありません。トップスピードにたどり着きやすくなるだけです。これまで何人もの人に「トップスピードがどのぐらい?」っと聞かれた事がありますが、車のトップスピードはエンジンの最大回転数(レブリミット)とタイヤのサイズトランスミッションのギア比ファイナルギア比(ディフギアのギア比)から計算され、それ以上のスピードはどうやっても出せません。まあ追い風で少しは速度が上がることはあるかもしれませんけどね。自分の車のトップスピードを知りたい方はこちらのページにある「車の最大速度表計算」で計算してください。タイヤのインチアップしてもタイヤの外径からほぼ計算どおり速度となります。

 

余談ですが国産車のメーター読みはあまり参考になりません。「180km/h以上出た」なんて話をされた事がありますが、今の時代ならばレーダー探知機などでGPS計測してみると100km/h以上のメーター誤差がかなりある事に驚くかと思います。(メーカー、車種によりますが国産車の場合120km/h以上は結構な誤差があるようです。)またホイール・タイヤのインチアップでタイヤの外周の長さのずれが大きい場合速度が上がれば上がるほどスピードメーター誤差が大きくなります。

秋山渉のレビンは?(笑)

最近の世代の方で漫画またはアニメ頭文字Dの中で「後付け過給機を装備出来る」と知った人も少なくないと思います。あくまでも漫画の世界での描写ですが、ここで試しに秋山渉のレビンのパワー計測を計算してみます。(笑)

 

秋山渉のターボ、スーパーチャージャー使用のパワーの検索結果

ネットで検索してみたところ上記は頭文字Dのゲーム(?)の中のパワー数値のようですが(実際の漫画の中ではパワーが公表されていないのかな?)渉のドッカンターボ仕様はブースト1.5kg/cm2と結構なブースト圧のようですが、AE86のエンジン4A-GEUの最高出力は130馬力/6600rpmっとなっていますので、本来ならば280馬力ではなく130ps x 2.5kg/cm2=325馬力なので、どこかにロスがあるか過給機をつける上でちゃんと圧縮比を落としているんですかね(笑)。スーパーチャージャーはブースト1.0kg/cm2未満との事なので仮に0.99kg/cm2で計算してみると130ps x 1.99kg/cm2=258馬力になりますので220馬力という事は、こちらもターボ仕様同様にどこかにロスがあるか圧縮を落としているようです。(笑)

ゲームの中でも結構理論値以下に設定されているのでリアリティがありますね。

後付けスーパーチャージャー装備は茨の道?

スーパーチャージャー装備は完全なチューニングエンジンとなりますので「茨の道」に足を踏み入れた事になるかと思います。(笑) インジェクター交換もせずにほぼポン付けできるライトチューンな低過給のスーパーチャージャーキットは除きますがチューニングエンジンの車に乗るのは、よほどの車好き、そして過度なメンテナンスができる事が必須となりますのでモアパワーを得ることでの代償はかなり大きなものとなります。単に「パワーを上げたいから後付けスーパーチャージャー装備」という安易な考えはかなりリスクが高いと思います。「そこまでして後付け過給機つけて意味あるの?」って思った人には間違いなく向いていないじゃないでしょうか?ざっくりと言えば、費用対効果で考えるとデメリットの方が多いと思います。費用も含めたメンテナンスが苦でなければメリットの方が大きくはなると思います。例えばスーパーチャージャー装備によって間違いなくエンジンオイルの交換頻度は従来と同じサイクルというわけにはいかなくなります。過給機装備によってどうしてもブローバイガスが増大しますのでエンジンオイルはこれまで以上に汚れやすくなりますのでどんな高性能なエンジンであっても後付けスーパーチャージャーを装備した場合はメンテナンス量が増えます。

 

実際、私の車が現行時代(2000年ぐらい)、同じようにスーパーチャージャーを装備した車両の方は何人かいましたが、継続して乗り続けた人は皆無でスーパーチャージャー装備後長くて1~2年っと言ったところでしょうか?多くはトラブルにみまわれて降りてしまったと思います。特にBMWE46用の初期の海外のスーパーチャージャーキットなどはピークパワーしか考えておらず、安定して動作しない、メンテナンス量が増えるなどの情報が無かったため辛い思いをした方が多かったと思います。一般的には「車種別専用キット」と言えばポン付け出来て、「まともに動く」っと考える思いますが、見事に裏切られたんじゃないでしょうか?

AC Schnizer製BMW E46 320スーパーチャージャーキット1

AC Schnizer製BMW E46 320スーパーチャージャーキット2

AC Schnizer製BMW E46 320スーパーチャージャーキット3

上記は2002年頃、BMWでは有名なチューナーメーカー AC Schntizer製E46/320前期 M52TUB20エンジン専用のスーパーチャージャーキットを装備した車両です。(日本では販売されなかったようですがBMW E46のM54モデル用のAC Schntizer製スーパーチャージャーキットはヨーロッパでは販売されていたようです。海外のフォーラムでドイツ人に教えてもらいました。)

この車両はBMW E46が現行の頃に仲良くして頂いた方なのですが、オーナーからは色々と大変な思いをした事を伺いました。(上記の写真もオーナーからお送り頂いたものを掲載しております。)そもそもこのキットは左ハンドル用なので右ハンドル使用に装備するには色々と異なる点がありキットと言えども一部ワンオフパーツによって作成したようです。肝心のDMEの書き換えは当然ドイツのSchnitzer本社へDMEを取り外して郵送が必要で、調子が悪かったため数回DMEを送って書きなおしてもらったと伺いました。とにかく装備後のトラブルはかなり多かったようです。
また、夜中の首都高速走行中にファンベルトが切れてしまいエスケープゾーンのほぼない首都高で「レッカーを待った」っというような苦い秘話を伺いました。(都内の首都高を知っている人ならばどのぐらい大変かわかると思います)

 

車検制度がこれだけ厳しい日本でファンベルトが切れるというのは「昭和の話」のようにも聞こえますが(笑)、BMWで有名なチューナーメーカーであるAC Schnizer製のキットでもメンテナンス頻度を多くする必要があるという事ですね。BMWのメジャーメーカーのスーパーチャージャーキットでも茨の道は避けられないというのが現実のようです。

上流式?下流式?

いきなりですがエンジンにスーパーチャージャーを装備する場合、上流式、下流式と言われるスーパーチャージャーのシステム構成を示す方式があります。スロットルバルブ(Throttle body)より前にスーパーチャージャーがあるのが上流式(下記の図)、

上流式

スロットルバルブ(Throttle body)より後ろにスーパーチャージャーがあるのが下流式(下記の図)となります。

下流式

私はエンジン設計等に専門家ではありませんので詳しく調べた訳ではありませんが、基本的に自動車メーカーがスーパーチャージャーシステム付きの車両を開発する場合は下流式が基本となっているようです。

上記は私が使用しているスーパーチャージャーユニットのメーカーRotrex社のインストールマニュアルの図で、説明書にはNAエンジンに後付けするには上流式の方がシステム的に楽にインストール出来るので多くの後付けスーパーチャージャーキットは上流式がほとんどだと思われます。インテークパイプにスーパーチャージャーを割り込ませるわけなので大幅な配管変更をしなくて済みます。

BMW E46用のスーパーチャージャーキット化してリリースしていたメーカーActive Autoweake社、ESStuning社、G-Power社、VF社、HKS社、などのスーパーチャージャーキットの中で下流式はG-Power社とESS社が後発でリリースしたエンジンのインマニをスーパーチャージャーユニットに置き換えるスーパーチャージャーユニットの2つのみでした。(既にE46用キットはディスコンとなっています)E46も後期モデルからドライブバイワイヤー方式の電子スロットルバルブが採用され、スロットルバルブの移設が安易に出来るようになってから下流式のスーパーチャージャーシステムがリリースされたようです。

私の装備しているスーパーチャージャーはキットではありませんが上流式となります。このブログの中で長年ブローバイガスの処理方法について色々な対策を行ってきましたが、結論から言うと上流式のスーパーチャージャーシステムにはシステムとして稼働させるに色々と制約がある(というかエンジンの仕様によってはシステムとして成り立たない)ため、やはりメーカーは下流式のスーパーチャージャーシステムを採用しているのだと思われます。

ブローバイガスとの戦い

車種別スーパーチャージャーキットならばエンジンに合わせた対策を行っていると思われがちですが、実際にはしっかりと対策されているわけではありません。スーパーチャージャーを装備するにあたりNAエンジン構成のブローバイガス還元装置の処理方法を変更しなければ過給機を装備することが出来ません。私の車のエンジンでブローバイガス還元装置をそのままにした場合クランクケースにブースト圧がそのままかかってしまう為タペットカバーパッキンなどからオイル漏れを起こします。このブログでもブローバイガスに対する対策を色々やってきましたが未だに回答がみつかっておりません。ブローバイガス還元装置が文句なく完璧な状態を目標とはしておりますがたどり着けておりません。

BMW E46 M3 Active Autoweke社のスーパーチャージャー

上記はE46M3へActive Atuowerke社ののスーパーチャージャーキットを装備した車両です。キット付属のインテークマニホールド(インマニ)へ交換してインマニ本体にブローオフバルブが取り付いています。S54B32エンジンの旨味である6連スロットルバルブはそのまま使用しているのでこちらも上流式スーパーチャージャーとなります。

スーパーチャージャーのサクションパイプ部分からブローバイガス成分のオイルミスト成分が滲んでいる

スーパーチャージャー本体はASA製なのでエンジンオイル流用タイプかと思われます。(Rotrexは専用トラクションオイルを使用。ASA製はエンジンオイルを流用するのでオイル粘度等に気をつかう必要があります。)

上記の写真を見てもらうだけでスーパーチャージャーのサクションパイプ(エアクリーナーからスーパーチャージャーの間)にかなりのオイルが滲み出ています。オイルの滲みの場所からブローバイガスのオイルミスト成分が滲み出ているのがわかりますね。

ブローバイホースの色が変色している

当然ですがこの車両もブローバイラインにオイルキャッチタンクが装備されております。透明なはずのブローバイホースがかなり変色(茶色っぽく)しているのがわかるかと思います。

スーパーチャージャーには比較的大径のプーリーが装備されている

上記のはスーパーチャージャーのプーリー部分です。かなり大きな径のプーリーが付いているので過給圧は抑えめになっているかと思います。(見た目90~mmはありそうですね。スーパーチャージャーのプーリーの径を小さくするとスーパーチャージャーの回転数が上がり過給圧があがります。)

オーナー曰く、500馬力ぐらい出ているとの事でしたので、先の過給圧を逆算してみるとS54B32エンジンのパワーは343馬力なので、500馬力÷343馬力=1.45kg/cm2となり日本仕様の相対圧だと大体0.45kg/cm2ぐらいの過給圧がかかっていることになります。S54B32エンジンは高回転ユニットなのでエンジンノーマルのままだとこのぐらいがほぼ限界なんだと思います。S54B32エンジンは当初の技術で直列6気筒エンジンで市販車化するのに限界に達していたエンジンなのであまり高い過給圧をかけるのには無理があるのだと思います。聞いた話ですがE46M3はエンジン開発が1年遅れリリースが遅れてしまったそうですし、後続のE9xのMエンジンはV8化されたのでストレート6NAエンジンのピークポイントだったんだと思います。

銀カブさんのE46M3

このピカピカなE46M3カブリオレはオーナーには許可を頂き、撮影させて頂きました。(銀カブさんこの場を借りてお礼申し上げます。)

少し話がそれましたが後付けスーパーチャージャーで、モアパワー狙いな構成の場合はどうしてもブローバイガスとの戦いとなります。ちなみにこのE46M3はすでにエンジンは2基目、SMG2ミッションは3基目とのことです。S54B32エンジン本体だけでもかなり高額ですのでので、やはり茨の道ではありますね。

オートマチックトランスミッション警告灯が点灯

かく言う私もスーパーチャージャー装備直後はオートマチックトランスミッションでしたが、スーパーチャージャー装備初日に上記のようにオートマチックトランスミッション警告灯が点灯してしまいました。状況的にはミッションが滑ってしまいギアがホールドされてしまうので、高速道路などはまともに走行出来ませんでした。このままだと過給圧をかけないようにゆっくりと丁寧に走る必要があり、これではスーパーチャージャーを装備した意味がありません。海外にはBMW用の強化ATパーツを販売しているところもありましたが、オートマチックトランスミッションをばらして組むことが出来る技術を持っている場所はどこにもありませんので、選択肢としてはマニュアルトランスミッション化のみでした。正直に言えばBMWだからマニュアルトランスミッション化出来る前提あって過給機をつけたパワーアップを行うことを進めた事は否定出来ません。

上流式はダメなのか?

先にも記載しましたがスーパーチャージャーシステムの上流式はシステムとして構成する点でもっとも問題となるのがクランクケースから排出されるブローバイガスの処理方法です。自動車メーカーが開発しているならばそれなりに対策されているとは思いますが、キットを含め後付けスーパーチャージャーを装備する場合、なんらかのブローバイガス対策を行う事は必須となると思います。

上流式のスーパーチャージャーシステム構成上でアクセルオフ時のためにリリーフバルブが装備する必要があります。

HKS社から至急されたリリーフバルブ

上記は私の車にスーパーチャージャー装備時点で装備したHKS正のリリーフバルブです。ターボチャージャーで言うブローオブバルブとまったく同じ原理・理由で装備されておりますが、スーパーチャージャーシステムではリサキュレーションバルブ、リリーフバルブと呼ばれる事が多いようです。

ブローオフバルブ

上記は私が装備しているトラスト製のブローオフバルブです。ちなみに下記の上流式スーパーチャージャー構成図の中では「Recirc. valve」と記載されています。

上流式でブローバイガスを戻す位置

上記の図の赤い矢印の部分へクランクケースからの排出されるブローバイガス還元装置(エアマスメーターとスーパーチャージャー間)のホースが接続される事になります。

ブローバイガスを戻す場所

エアマスメーターとスーパーチャージャーは上記のようにサクションパイプで接続され、図のCrankcase ventilationがブローバイガスを吸い出すホースです。

この構成は普通に加速している時などはなんら問題はありませんが、エンジンが高回転状態でアクセルオフした時、エンジン回転数が高いままなのでスーパーチャージャーは過給を続けながらリリーフバルブを開きますので、アクセルオフ中はブローバイガスが発生していない状態でクランクケースからスーパーチャージャーの強烈な負圧で吸い込んでしまう、またはリリーフバルブで開放された過給された空気がサクションパイプ内部を満たしてしまうため跳ね返される(クランクケース圧を排出できない)状態となることが(不定状態)想定されます。
以上の理由からこの状態を想定しサクションパイプの形状や容積を考慮しなければならないためシステム的に構築するのは簡単ではありません。(パイプ内部での気体の移動には慣性の法則が働きますので、パイピングを配置する際にはそれらを考慮する必要もあります。)BMWのM52TUB・M54エンジンはブローバイガス還元装置の方式が国産車によく採用されているクローズド式ではなくシールド式+αのシステムになっているので構成上シンプルではありますが、上流式スーパーチャージャーシステムを構成するはシステムとして構築するのに無理があります。

海外のE46のフォースインダクション(ターボまたはスーパーチャージャー)装備の車両のブローバイガスの処理はほとんどが大気開放だったりします。オイルキャッチタンクは装備してますがブローバイガス排出用のエアフィルタを装備している程度のものがほとんどです。日本は車検制度がありますので大気開放のままというわけにはいかず、そもそもブローバイガスを大気開放した状態では臭くて車に乗り続けられません。(ブローバイガス還元装置が装備されていない旧車の時代はやはり長時間車に乗るという前提がなかったという事でしょうかね?)

これらの理由から上流式スーパーチャージャーがダメという訳ではありませんが不定な部分があるのは事実かと思います。上流式は「苦肉の策の邪道な方式」といったらそれまでかもしれませんが、長い目で見ると辻褄が合わない点をどうクリアしているかが重要な点であるかと思います。

あと色々なブログを読んで「上流式スーパーチャージャーシステムはアイドリングから過給される」などと勘違いしている方がいましたがスーパーチャージャーユニットは回転数が低ければ過給される事がありません。そもそもスーパーチャージャーユニットはエンジンがある一定以上回ったときに過給されるように設計されているのでアイドリング状態で過給されるような事はありません。初期の頃のスーパーチャージャーユニットではプーリー部分に遠心クラッチを装備してある一定以上にならないとスーパーチャージャーが回転しないような構成になっています。BMW E46だとRacing Dynamics社の試作スーパーチャージャーシステムが採用していました。(商品化はされなかったようです。)遠心クラッチを電磁式にして運転手が任意に過給をかけるというシステムもあったようです。

 

現在の自車の仕様

現在装備中のスーパーチャージャー本体

スーパーチャージャーを装備してから少しづつ色々調整を進めて17年。Rotrexのスーパーチャージャーは3基目です。

スーパーチャージャー交換ときの写真

Rotrex本社ではスーパーチャージャーのオーバーホールなどは行っておらず、故障したら交換のみとなっていますが海外にはオーバーホールを行っているショップもあります。故障したスーパーチャージャーを送っての修理となるので新品を買うよりは安いけど、故障内容によっては結構な金額がかかるようです。

N54B30インテークマニホールドを装備

ちなみに現在の自分の車の最大過給圧はN54B30エンジンのインテークマニホールドに交換をし容積率がアップしたためか最大過給圧は0.6kg/cm2ぐらいになっています。同じ過給機、ほぼ同じ配管で過給圧が0.8kg/cm2から0.6kg/cm2に落ちたということはM52TUBエンジンのインテークマニホールドよりN54B30エンジンのインテークマニホールドの方が容積率で1.3倍ぐらいあるということになります。

N54B30エンジンのインテークマニホールドを装備したときのシャーシダイナモ結果

上記はN54B30エンジンのインテークマニホールドを装備してシャーシダイナモで計測した結果です。

シャーシダイナモで計測

このシャーシダイナモの係数は1.2なので計測結果の324馬力x1.2倍で388馬力となりました。この馬力から過給圧1.6kg/cm2で逆算すると388馬力÷1.6kg/cm2=244馬力となりNAベース+N54B30のインテークマニホールドのみでカタログスペックの193馬力から50馬力アップという結果となります

 

M52TUB・M54Bエンジンのインテークマニホールドには色々と欠点や細工があるため、海外ではM50エンジン用のインテークマニホールドを流用するが流行っていましたが(M50インマニへ置き換える専用キットもあります)、M50用のインテークマニホールドの入手困難になりつつあるためポーランドにあるRACEMODE社が直噴エンジンのN54B30のインテークマニホールドを流用するアダプタを開発しました。

N54B30インテークマニホールドとRACEMODE製アダプタ

NAエンジンベースで50馬力アップというのはちょっとすごい数字ですが、一応RACEMODE社も「最大で50馬力ぐらいまでパワーが上がる」っとアナウンスしておりますのでほぼ計算通りの結果となりました。


「DISAを取っ払ってストレート形状のインテークマニホールドにするだけで50馬力アップ出来る!」っと言うと聞こえば良いのですが、これはあくまでもDMEチューンの現車合せは必須となりますので日本国内でライブチューニングできる場所があれば現実的かもしれませんね。(DMEの現車合せが出来ればメカチューンも出来るとは思いますが日本でそこまで出来る所は無いと思います。もし出来たとしても海外でE46ターボ化している人のDME設定の大半が行っているインジェクターマップに係数を掛けただけの決め打ち濃いめの燃料設定でしょう。もしかしたらライブチューンが出来る場所を私が知らないだけかもしれませんけど。)

 

この記事を読んで後付け過給機へ対する印象は悪くなるような気もしますが、現状自分の車は「速くはないけど楽しい車」には仕上がっていると思います。

以上、「後付けスーパーチャージャーについて」でした。

 

 

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